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スウェーデン規制当局 原子力拡大に向け法改正等を提案

10 Aug 2023

最終報告書について記者会見するSSMのM.クノッヘンハウアー長官(=左)と気候・企業省のポルモクタリ大臣 ©Swedish Government

スウェーデンの原子力規制当局である放射線安全庁(SSM)は89日、政府が進めようとしている原子力の利用拡大にともない、規制の枠組みや法整備など、必要となる前提条件の特定調査を終えて最終報告書を気候・企業省に提出した。既存の原子力発電所の運転期間延長や新型炉の導入には、様々な法改正が必要だと指摘しており、新型炉に関しては予備的設計審査を行うことなどを提案している。

スウェーデンでは現在、6基の商業炉が稼働中だが、現行法では新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、全土で同時に運転できる基数も10基までに制限されている。昨年9月の総選挙で発足した中道右派連合の新政権は、前政権が目指していた「再エネ100%のエネルギー供給システム」を、同年10月の政策協議(ティード合意)で「非化石燃料100%のシステム」に変更。新規原子炉の建設も含めた対策に、合計4,000億クローナ(約54,000億円)の投資を行うことを決めた。

今回の調査は、前政権の指示によりSSMが昨年から実施していたもので、同型の原子炉を複数サイトで建設する場合の許認可についても、SSMは必須となる前提条件を分析している。今年2月には中間報告書を提出しており、SSMは環境法と原子力技術法、および放射線防護法の改正を提案。既存の原子力発電所で安全性が確保されている限り、これらの法的枠組みやその他の前提条件が整えば運転期間の延長は可能との見解を表明していた。

最終報告書は中間報告書を補完する内容になっており、SSMは新型炉の導入について関係法のさらなる改正とその他の方策が必要だと指摘。安全性を損なうことなく、新型炉の許認可手続きを簡素化することは可能だという。

また、諸外国との協力を拡大して、新型炉で事前の設計審査を行うことを提案。これにより、規制当局としては正式審査の効率的な実施に向けて審査能力を拡充し、準備態勢を整えることができる。設計の最終段階になってから、認可の発給を阻むような根本的課題や障害が判明するリスクを軽減することも可能となる。

今回のSSM報告を受けて、気候・企業省で環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣は、「地球温暖化に対応するには非化石発電量を現在の2倍にする必要があるが、増加分の大部分は原子力で供給しなければならない」と指摘。この目標に向けて、「2045年までに従来型の大型炉を少なくとも10基建設し、設備容量を現在の3倍近くにする必要がある」と表明、SSMの報告書はこうした政府目標のベースになるとしている。

SSMでこの調査を担当したプロジェクト・マネージャーは、「原子炉の設計要件は主にその性能に基づいており、炉型や容量によるものではない」と説明。このため、軽水炉以外の炉型の場合、さらなる調査が必要になるなど多少の調整が必要だが、既存の規制要件の大部分を適用できる。「SSMの現行審査や新しい規制の開発では、このような点を考慮したい」と強調している。

(参照資料:SSMスウェーデン政府(スウェーデン語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA89日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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