IEA主任分析官が斬る「エネルギーと地政学」 日本の進むべき道は

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聞き手=今泉奏 相原亮
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 ロシアのウクライナ侵攻から24日で1年。世界でエネルギー危機が起きると同時に、カーボンニュートラル(脱炭素)への転換が急速に進む。これからどこへ向かうのか――。エネルギー分析の最前線に立つIEA(国際エネルギー機関)チーフエコノミストのティム・グルド氏が朝日新聞のインタビューに応じ、展望を語った。

 TIM GOULD ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院修了。ウクライナを中心に、東欧で10年間にわたり国際機関のエネルギー政策にかかわる。2008年、IEAに入り、ロシアやカスピ海地域のエネルギーの専門家として活動。21年から現職。

 ――今年、エネルギー危機はどうなるでしょうか。

 「私たちは、この危機をその深さと複雑さから『第1次世界的エネルギー危機』と呼んでいます。ロシアのウクライナ侵攻が引き起こしたものです。石油とガスの両市場で価格の上昇圧力は緩和されていますが、重大なリスクが残っています。その不安定要素のひとつが、中国です。昨年、中国では石油とガスの両方の需要が落ち込むという、非常に珍しい年でした。今年、その需要がどれだけ戻るかまだ分かりません。もうひとつはロシアです。ロシアからEU(欧州連合)への石油製品の輸入が禁止されました。(石油製品は様々なものに使われているため)複雑な貿易ルートの再構成が必要になります」

 「一方、電気自動車(EV)の普及と燃費の向上により、石油の需要が1日100万バレル近く減っています。石油依存が減ることで、二酸化炭素(CO2)の排出削減に加えてエネルギー安全保障への重要な貢献となっています」

 ――太陽光や風力、水素などクリーンエネルギーへの転換は、多くの国が取り組んでいます。

脱炭素を達成したら地政学的リスクはなくなるのか。エネルギー安全保障と気候変動対策は両立するのか。世界が直面する課題にグルド氏が答えます。

 「多くの国や企業が、この機…

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