半導体の自前確保は今や、世界の一大トレンドだ。国家は米中摩擦やロシアによるウクライナ侵攻を背景に、先端半導体を「軍事面を含む競争力の源泉となる戦略物資」として位置づけるようになった。産業面においても、サプライチェーン(供給網)寸断に備え、旧世代のレガシー半導体確保にも投資が続く。日本、そして世界の半導体量産状況はどうか。主にプロセスノード†の視点から追った。
半導体産業への積極的な政策支援が、ここ数年で相次いでいる。日本では、台湾TSMC(台湾積体電路製造)が熊本県に建設する半導体工場や、Rapidus(ラピダス、東京・千代田)の北海道千歳市の半導体工場新設などに対して助成をしている。こうした企業に助成金を出すことで、日本に量産拠点を置いてもらうのが狙いだ。
こうした政策的な支援を行うために、日本以外でも海外ファウンドリー誘致などへの助成金拠出を円滑にするための法律の整備が進んでいる。いわゆる「半導体法(Chips Act)」だ。2022年には米国の「CHIPS&Science Act(CHIPSおよび科学法)」と日本の「経済安全保障推進法」が成立、2023年4月にはEU(欧州連合)の「欧州半導体法(European Chips Act)」が暫定合意した。日米欧政府は世界でも活発に半導体に投資し、半導体法に基づいて数兆円規模の半導体投資を進めている(図1)。
政府による半導体分野への財政支援では、米国が先陣を切り、日本が続く。その後を追いかけるのが欧州である。「我々は成熟品だけを量産するというのは違う。先端品も製造する」と欧州委員会のティエリー・ブルトン氏は語る。米Intel(インテル)のような半導体製造企業の工場誘致を積極的に進めつつ、これまで経験の薄い先端半導体の量産基盤を域内に確保しようと前のめりだ。
先端半導体を量産できる企業は、どんどんと絞られてきた。EUV(極端紫外線)露光装置が必要となる7nm(ナノメートル)世代プロセス以降のロジック半導体では、TSMCや韓国Samsung Electronics(サムスン電子)、インテルの3社にまで狭まった。この競争に日本から突如参入を表明したのがラピダスである。3社からは数年遅れるものの、2027年の2nm世代の量産を目指す(図2)。
各プロセスの使い道はこれだ
先端品から成熟品まで、それぞれのプロセスノードの半導体はどこに使われるのか。半導体用途としてシェアが大きいスマートフォンとクルマについて見てみる。
図3にスマホの内蔵部品に使われる半導体のプロセスノードを示す。28nm以降の先端品は、スマホの頭脳を担うロジック半導体(IC)や5G(第5世代移動通信システム)関連が中心である。イメージセンサーは、ソニーグループ傘下のソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)が市場を握る。そこで同社は28nmプロセスを確保するため、同プロセスなどを量産するTSMC子会社のJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)に出資している。