マーケティング・シンカ論

人気レジャー施設が「現地払いのWeb予約」をやめただけで、売り上げ2.5倍以上に──なぜ?PANZA宮沢湖(2/3 ページ)

» 2022年02月16日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

しかし、新システムには反対の声が……

 そこで、PANZA宮沢湖では自社サイトでの予約時にオンライン決済ができるシステムを導入した。アソビューが提供する、「ウラカタ」というシステムだ。

 これまでの課題を解決するため、ウラカタ導入時には、事前決済なしでは予約確定できないようにした。

 しかし、スタッフからは反対の声が上っていたという。なぜなら、事前決済のみとすると、クレジットカードを持っていない人は、サイトから予約申込できないからだ。

 「『クレジットカード持っていない人は予約できないんですか!?』とスタッフから反発がありました」と太田さんは話す。PANZA宮沢湖は中学生以上であれば、大人がいなくても楽しめる施設となっているが、これではクレジットカードを持てない中高生が予約できない。もちろん中高生以外にも、クレジットカードを持っていない人がいる。

写真提供:PANZA宮沢湖

 しかし、太田さんは「サイトで予約できないと分かれば、自ら電話をかけて予約してくれます。電話予約なら、現地で現金払いもできます。クレジットカードがなければ絶対に予約できないわけではありませんから、その旨を説明しました」と導入を決定した。「懸念点があっても、まずは導入してみて、それから不具合が出てきたら考えよう、というスタンスなんです」と太田さんは笑う。

 反対を押し切ってまで導入し、効果はどうだったのだろうか。

売り上げだけでない「予想以上の効果」

 新システム導入後、太田さんは「予想以上の効果があった」と語る。施設の回転率、月商、人員配置、スタッフのモチベーション、お客側の心理において変化が見られたのだ。

 現地払いでは3分だった受付時間が1分に短縮され、15組全員を通すのにわずか15分しかかからなくなった。「『こんなに待つのか』というクレームが、一切なくなり、時間いっぱい遊んでもらえるようになりました」と太田さんは話す。

 加えて、事前に支払いを済ませているために、予約していた枠の変更をする人が少なくなり、渋滞に巻き込まれて遅れる場合には連絡が届くようにもなった。

 そのおかげで、事前に変更があった枠は当日受け付け分に回せるようになり、回転率がアップ。「今では、ノーショーがほぼゼロになり、レジ周りのオペレーション改善による回転率アップと合わせ、対昨年比で平均157%、最大272%の月商アップにつながりました」と効果絶大だ。

 事前にある程度の客数が確定するため、日商だけでなく月商の見込みも立てやすい。さらに、当日予約や当日の現地受付があるものの、ほとんどの場合、前日夜までに予約が入るため、オペレーションスタッフの配置が組みやすくなった。

 「どのくらい利用客がいるか分からない」「無断キャンセルがあるかもしれない」という不安やイレギュラーな対応が減ったため、スタッフのモチベーションも上がったという。システム起動の遅いクレジットカード決済端末の利用頻度が減ったことで、受け付け前の長い列を前に、急かされる気持ちで働くストレスも解消した。

 お客側の意識にも変化があった。「例えば、ファンモックをご利用いただく際はサンダルがNGなのですが、以前はサンダルで来てしまうゲストが一定数いました。しかし、支払いが済んでいるから、できる限り楽しまなくちゃ、という心理が働くのでしょう。事前予約に切り替えてから、注意事項をしっかり読み込んで運動しやすい靴で来場してくれる人が明らかに増えました」と太田さんは喜んだ。

ファンモックは、足元がネット状のためハイヒール・ビーチサンダルなどの脱げやすい履物での利用はできない。写真提供:PANZA宮沢湖

 渋滞で遅れそうな際は連絡が来るようになったとのことだが、実際には絶対的に時間に間に合わないほど遅れたという予約客は「8カ月運用していてほぼゼロ」だという。渋滞も見越して、時間に余裕を持って家を出発しているのだろう。“すでに支払ったからにはできる限り楽しみたい”という意識が働くようだ。

 なお、天候不良の場合などは、決済後も無償でのキャンセルに対応している。

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