熱海土石流 砂防ダムが逢初川上流に完成 住民帰還に向け準備前進

2023年3月21日 07時13分

逢初川上流に新設された砂防ダム(えん堤)=熱海市伊豆山で

 二〇二一年七月に静岡県熱海市伊豆山であった大規模土石流の被害を受け、国が逢初川上流に建設していた砂防ダム(えん堤)が完成した。国土交通省熱海緊急砂防出張所が二十日、県に管理を引き渡したと発表した。砂防えん堤の整備は立ち入り禁止が続く警戒区域の解除の条件の一つとして市が掲げており、住民の帰還に向けた準備が一歩進んだ。(向川原悠吾)
 えん堤は崩落した盛り土があった地点から約八百メートル下流地点に建設された。土砂の勢いを止めるため「本堤」「副堤」「垂直壁」と呼ばれる壁が三段階に設けられ、全体の高さは十三メートル、幅五十九メートルで、容量は一万八百立方メートル。今も残る不安定な土砂約一万七千立方メートルをせき止められる。
 盛り土の起点部とえん堤の中間地点付近には、一九九九年に建てられた容量約四千立方メートルの既存の砂防えん堤があったが、土石流災害では五万立方メートルもの土砂が崩れ落ち、えん堤を通過してしまった。国は昨年三月から新たな砂防えん堤の建設工事に着手。一連の事業費には二十七億円が投入された。
 えん堤や設計図などは二十日に県に渡され、四月からは県の管理となる。土石流発生後に国土交通省が発足させ、工事を担当していた同出張所の蔭山敦士建設専門官は「一日でも早い地域の安全のために完成させた。住民が自宅に戻れるよう協力できたことをうれしく思う」と話していた。同出張所は三十一日に廃止する。
 市は警戒区域を解除する条件として、砂防ダムの完成と土石流の起点部に崩落せずに残った不安定土砂およそ二万立方メートルの撤去を掲げている。落ち残った土砂の撤去は県が行政代執行による工事を進めており、五月中にも終える見込み。

関連キーワード


おすすめ情報

静岡の新着

記事一覧