メンツを失った習近平政権 気球撃墜 中国は「米が過剰反応」と反発

習近平国家主席(共同)
習近平国家主席(共同)

【北京=三塚聖平】米軍が中国の気球を撃墜したことを巡り、中国側は、米国の政界やメディアが気球飛来を政治問題化して「過剰反応した」との主張を強めている。

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の胡錫進(こしゃくしん)前編集長は5日、交流サイト(SNS)で、米国の世論と政界が気球問題を「政治化」したと強調、「米国が不測の事態に対し、事実に基づいて問題を処理する能力がないことを明らかにした」と批判した。

こうした主張の背景にあるのは、米側に責任を転嫁しようとする思惑だけではない。ブリンケン米国務長官の訪中が延期されただけでなく、気球が撃墜されたことで、メンツを失った形の習近平政権としては国内向けに強い対外姿勢を見せる必要もあるようだ。

一方で、中国軍が気球を使用したり、気球の研究を進めたりしているとみられることはこれまでに伝えられていた。台湾メディアによると、昨年2月には中国軍が放ったとみられる複数の気球が台湾北部や中部の上空で確認された。当時、台湾側は「気象の科学研究用」という見方を示していた。

また、中国軍の機関紙、解放軍報は昨年2月、軍用気球の歴史や各国の動向を紹介する記事で「現在、技術の進歩が気球運用の新たな扉を開いた」と指摘。ナビゲーションシステムや人工知能(AI)を応用して高度や方向を変えて目標空域に到達できるようになった、などと強調していた。

中国政府は、気球は「民間用」と主張するが、習政権は民間の先端技術を軍事分野に取り入れるといった「軍民融合」を積極的に推進。気象分野でも軍民融合に関連した取り組みが報じられており、「民間」と軍の境目がさらにあいまいになっているのが実態だ。

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