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大手をはじめ建設会社が注力する洋上風力。工事や商業運転開始が相次いでいる。海洋土木に特化した企業以外も作業用の大型船を建造するなど受注への準備を急ぐ。各社がのめり込む理由に迫る。

 島国である日本の広大な海域を有効利用すれば、大量導入を見込めるのが洋上風力だ。2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、特に期待が大きな再生可能エネルギーといわれる。

 建設時に海上での作業が多い洋上風力では、一般的に風車1基当たりの建設費が陸上の2倍以上になる。さらに、建設費に占める風車本体の製作費の割合が陸上の半分以下だ。そのため、建設会社が関与できる部分が大きい。

 洋上風力に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの飯田誠特任准教授は、「建設会社が洋上風力の関連事業に乗り出した背景には、市場性の高さがある」と話す。

 現在、22年12月に商業運転を開始した秋田洋上風力発電に続けと、全国各地で大規模な洋上風力の建設が進む(資料1)。施工者としてだけでなく、大林組のように事業者として参入した建設会社もある。同社グリーンエネルギー本部の菊谷晋吾企画部長は「固定価格買い取り制度による安定収益が大きい。維持管理を手掛ける関連会社とのシナジー効果も期待できる」と話す。

資料1■ 全国各地で工事がスタート
資料1■ 全国各地で工事がスタート
全国各地で進む大規模な洋上風力事業(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
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 各地で建設が始まった背景には、国による明確な目標設定がある。21年に閣議決定された第6次エネルギー基本計画で、計画中のものも含めて全国の発電設備容量を30年までに1000万キロワット(kW)、40年までに3000万~4500万kWという目標を掲げた(資料2)。

資料2■ 2030年に約1000万kW
資料2■ 2030年に約1000万kW
洋上風力の導入目標(出所:資源エネルギー庁の資料を基に日経クロステックが作成)
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 これは、秋田洋上風力発電の容量が約14万kWなので、同規模の設備が単純計算で40年までに200件以上整備されることになる。総事業費が約1000億円の秋田洋上風力と同規模の設備が200件以上整備されれば、20兆円規模の巨大市場の形成が期待できるというわけだ。