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「我々の目標は、半導体の国内基盤を取り戻すこと。この大きな目標に向けて、必要な対策はどんどん打っていきます」

 こう意気込みを見せたのは経産省のデバイス・半導体戦略室、荻野洋平室長だ。2022年春、筆者は経産省の半導体戦略の取材を進めていた。荻野室長は戦略を立てる主要人物として、筆者の取材に答えた。ラピダスの設立発表よりも半年ほど前のことである。

「経済安全保障(安保)などの観点から、世界中で技術関係の摩擦が激しくなっています。製品をどこで造ってもよかったこれまでの状況から、どこで作られているかが重要になってきているわけです。そんな中で、経済安保上重要な半導体技術や製造拠点が国内になければならないのではないか、という話が進んでいます」

 荻野室長がこのように説明する背景には、米国・中国間の貿易摩擦がある。「世界の工場」である中国は、半導体強国を目指し、次々と半導体工場を建設している。だが、米国は技術流出による中国の軍事力強化を恐れている。先端半導体は新しい戦争の要となる最重要物資だ。日本もこの米国の動きに追従し、国内での製造拠点設置に動いていた。国際情勢の混乱で半導体が確保できなくなれば、国内産業への影響も大きい。米中の覇権争いによって、世界の半導体サプライチェーンは再構築が始まっている。この流れに乗ることで、経産省は半導体復権を狙っているようだった。

 この日の取材で、荻野室長は半導体復権に向けた「3つのステップ」を提示した。世界から後れを取っている状況から段階的に追いつき、最終的に最前列に躍り出る計画である。期間は、2021年から2030年までの10年間だ。

経産省が掲げる半導体復権への3ステップ
経産省が掲げる半導体復権への3ステップ
(出所=経産省の資料を基に日経クロステックが作製)
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