気候変動の総費用はいくら? 2度目標も「経済的に不適切でない」

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桜井林太郎
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 全世界の気候変動にかかる総費用が2010~99年で46兆~230兆ドルに上ると、東京大や京都大など日本の20超の研究機関でつくるチームが推計した。温室効果ガスの削減対策費用と、対策しても残る経済被害に加え、人の健康被害や生物多様性の損失もお金に換算。将来の社会経済構造や気温上昇の温度目標を組み合わせて20通りを試算した。

 とりまとめ役の沖大幹・東大教授(水文学)は「温度目標にかかわらず、脱化石燃料依存で技術革新を推進するといった持続可能な社会が総費用をより少なくでき、世界がめざすべき方向性が明確に示された」と話している。

 研究チームは、再生可能エネルギー省エネ推進などに伴う温室効果ガスの削減対策費用や、気温上昇に伴う労働生産性の低下や河川のはんらん、浸水などによる経済被害額を算出。さらに、人の健康被害では低栄養や洪水、暑さによる死者数を、生物多様性の損失については哺乳類や鳥類、維管束植物などの絶滅種数をはじき出し、主要20カ国(G20)でのアンケート結果をもとに金額に換算し、積み上げた。

 その結果、温室効果ガスの削減対策費用は45兆~130兆ドルかかるが、被害・損失を23兆~145兆ドル分減らせると出た。

 気候変動にかかる総費用は、削減対策をとらず、産業革命前からの気温上昇が4度超まで進んだ場合に最大230兆ドルかかるが、持続可能な社会をめざせば46兆~90兆ドルになると試算された。

 気温上昇を2度未満に抑えるパリ協定の目標については、持続可能な社会をめざし、人の健康や生物多様性の将来価値を重視するシナリオでは、総費用が気温上昇3度とほぼ同等、3・5度からは1割近く少なくすんだ。温室効果ガスの削減費用がかさんでも、経済被害と健康被害、生物多様性の損失を大きく減らすことができたためで、「2度目標の達成が経済的にも不適切ではない」とした。

 沖さんは「気候変動にかかる…

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