原子力関連施設が集中立地するフランス北西部コタンタン半島で、使用済み核燃料の貯蔵プール新設計画を巡り、大規模な反対運動が起きている。また使用済み核燃料の最終処分場建設計画が進む北東部ビュール村では、建設中止を求める抗議活動が続く中、行政手続きが大詰めを迎えている。
これらの地域の人々の声に耳を傾けると、日本にも重なる「迷惑施設」を巡る社会のゆがみが浮き上がる。
行きつく先は常に
コタンタン半島の反対運動の発端は、同半島のラアーグにある再処理工場の使用済み核燃料貯蔵プールが満杯に近づいたことにある。政府が大株主のフランス電力(EDF)が隣接地に新たな貯蔵プールの建設を計画したところ、これまで原子力施設を受け入れてきた住民が、初めて大規模な抗議活動を始めた。
理由の一つに、迷惑施設の受け入れが永続化することへの懸念がある。EDFが新貯蔵プールの建設場所にラアーグを選んだ経緯が、それを物語る。EDFは当初、中部ベルビルシュルロワールに貯蔵プールを建設する予定だった。ここは、もともと原発のある場所で、EDF関係者は「既に原子力関連施設がある地域以外では、新貯蔵プールの建設はできないとの判断があった」と語る。既存施設周辺の地域の住民は抵抗感が小さいとの予測に基づく。
ところが、ベルビルシュルロワールで周辺住民の反対運動が起きた。フランス中の原発から使用済み核燃料が送り込まれる貯蔵プールは、通常の原発よりもリスクが高い。反対運動で計画は頓挫し、次にEDFが選んだのが、既に貯蔵施設があり、国内外から使用済み核燃料が搬入されているラアーグだった。
必要と分かっているが不快なものを近所につくることに反対するニンビー(NIMBY=not in my backyard)という言葉がある。誰もが「自分の裏庭に迷惑施設をつくられるのは嫌だ」と言えば、負担の再配分は行き詰まり、結局、現状が固定される。
ラアーグで抗議活動を続ける住民らは口々に「これまで私たちは、核のごみを受け入れてきたが、永遠に受け入れるつもりはない」と語った。…
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