台湾TSMC、半導体製造装置の納入延期を取引メーカーに要請=関係者

TSMC、米の対中半導体規制の免除無期限延長へ
 10月13日、半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、米国の半導体製造装置の対中輸出規制の免除が無期限に延長される見通しを示した。3月6日撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)
[東京/シンガポール/アムステルダム 15日 ロイター] - 台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW), opens new tabが半導体の需要低迷に一段と神経をとがらせ、最先端半導体向け製造装置の納入を遅らせるよう取引メーカーに要請したことが分かった。事情を知る関係者2人が明らかにした。
米アリゾナ州で400億ドル(約5兆9000億円)かけて進める新工場建設が遅延しているTSMCはコスト管理を徹底させており、落ち込む半導体需要をこれまで以上に懸念していることの表れだと関係者らは話す。
関係者らによると、製造装置メーカーは納入延期を今のところ短期的なものとみている。
TSMCはロイターの取材に対し、市場でのうわさにはコメントしないとした。劉徳音会長が7月に述べている通り、景気の弱さや中国経済の回復の鈍さ、マーケット需要の低迷により顧客が慎重になっており、在庫の抑制に動いていると指摘した。
関係者らによると、露光装置を手掛ける蘭ASML(ASML.AS), opens new tabも影響を受けた1社。同社のピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は今月行ったロイターとのインタビューで、顧客名を挙げず先端半導体向けの注文が延期されたことを明らかにした上で、短期的に解消経営の問題と考えていると述べた。
ASMLは現在フル操業で、今年は前年比3割の増収が予想されている。
「半導体工場の稼働準備に関する報道がいくつかあった。アリゾナだけでなく、台湾でも」とウェニンクCEOは述べる一方で、短期で解消する問題との見通しを示した。
TSMCは、アリゾナ工場の稼働開始を2025年に1年遅らせることを余儀なくされた。現地で労働力を確保することに苦戦し、台湾から技術者などを呼びよせる動きにも米労働組合の反発を受けている。
ウェニンク氏は「アリゾナの工場建設に台湾から多くの人材を送り込めば、彼らは他の場所では働けなくなる。つまり、これはある種の二重苦だ」と語り、アリゾナの問題が台湾など他の工場に影響する可能性があるとの見方を示した。
TSMCの劉会長は先週、「アリゾナはここ5カ月で非常に大きく改善した」と述べている。
<投資支出を引き下げ>
半導体需要の回復遅れを懸念しているのは、TSMCだけではない。
米アップル(AAPL.O), opens new tabが先日発表した新型iPhone(アイフォーン)は、より高速化した半導体を搭載しながら価格を据え置き、スマートフォン市場の世界的な低迷を反映したものと受け止められた。
中国が政府職員にアイフォーンの使用を制限したと報じられたこと、さらに中国の華為技術(ファーウェイ)(HWT.UL)が国産の半導体を使った新型スマホを発売したことにTSMCは警戒感を強めていると、関係者の1人は言う。
米政府がファーウェイに制裁を課したことを受け、TSMCは同社への半導体出荷を停止し、アナリストらによると、現在は中芯国際集成電路製造(SMIC)が供給している。
TSMCは7月の決算発表時、スマホやパソコンの需要低迷と人工知能(AI)市場の先行きが不透明だとして今年の売上高を前年比約10%減に下方修正した。第3・四半期は営業利益率が前四半期から4ポイント悪化するとの見通しを示した。
同社は、新型コロナウイルスの世界的流行期に拡大した設備投資の負担にも直面している。昨年の投資支出は前年比26%増の360億ドルに膨らんだ。
7月の決算では今年の投資支出を従来予想(320億─360億ドル)の下限に引き下げ、今後数年間は伸びを抑制する見通しを示した。
(記事執筆:浦中美穂 編集:久保信博)

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