ウクライナのザポリージャ原発はたびたび攻撃を受けてきた。原発への攻撃に備えることは大事だが・・・(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナでの戦争では原子力発電所に攻撃が仕掛けられた。これをもって「原発は危険だから脱原発すべきだ」という意見が散見された。だがこれはおかしい。原子力発電が攻撃を受けるということは、明らかにどこかの国が敵意を持って戦争を仕掛けてきた「有事」である。ならば、有事になると日本に何が起きるか、それをまず想像すべきだろう。

(杉山大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

石油備蓄が攻撃を受け、破壊されるかもしれない

 日本はエネルギーを多く輸入に頼っている。特に今なお一次エネルギー供給の約半分を占める石油はほぼ100%が輸入であり、90%以上を中東に依存している。天然ガスは中東依存は2割で輸入先の国は多様なものの、やはりほぼ全量を輸入している。石炭も全量を輸入している。

 石油ショック以来、日本は石油の戦略備蓄を行っており、官民で200日分の石油が貯蔵されている。しかしそのほとんどが野外に設置されている。

 例えば台湾有事ともなれば、中国は日本の最も脆弱なところから狙ってくるであろう。すると、石油備蓄タンクがテロ攻撃の対象となるかもしれない。あからさまな攻撃でなくても、誰がやったか分からない方法でエネルギーインフラを攻撃することはありうる。

 ウクライナへ侵攻したロシアの国内では、今年、石油・ガスの供給のための設備で謎の爆発が相次いだと報じられている。これは単なる事故なのか、ロシア国内の敵対勢力の仕業か、ウクライナの攻撃なのか、真相はよく分かっていない。

 石油備蓄への攻撃が未来の日本にも仕掛けられるかもしれない。