出力制御が実施され、一時的に停止した太陽光発電施設=福井県鯖江市小泉町

福井県内の事業者に届いた出力制御の指示メール

 全国の送配電会社が太陽光や風力の再生可能エネルギー事業者に対し電気の過剰供給を回避するため一時的な発電停止を指示する「出力制御」が急増している中、福井県内を含む北陸電力送配電の管内でも、企業などの長期休暇で電力需要が減るゴールデンウイーク(GW)に出力制御が頻発している。県内の再エネ事業者は「発電機会の損失は再エネ普及の流れに逆行する」と、対策を求める。

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 電力は需要(消費量)と供給(発電量)のバランスが崩れると、周波数が乱れ大規模な停電を引き起こす恐れがある。出力制御は、冷暖房などの使用量が少ない春や秋の休日で、太陽光の発電量が増える晴天時に多い。

 資源エネルギー庁によると、全国10エリアのうち北海道と沖縄を除く8エリアは昨年の4月からGW明けまでの晴天日の最小需要日が5月3、4日で、北海道、東北、中国、四国、九州の5エリアでGW期間中に出力制御が行われた。

 北陸電力送配電の管内では今年4月8日に初めて実施され、翌9日も行われた。その後も15、22、29、30日、5月1、2日にそれぞれ、翌日の供給量が需要量を大幅に上回る可能性があるとして出力制御が指示された。背景にあるのは太陽光発電設備の急増だ。固定価格買い取り制度(FIT)で北陸電力送配電の系統に接続している再エネ設備の出力(23年3月末時点)の内訳は、太陽光122万キロワット、風力17万キロワット、バイオマス13万キロワット、水力8万キロワット。特に太陽光は、FITが始まった12年時点の11万キロワットから10年で10倍超になった。

 福井県鯖江市小泉町の約80メートル四方の土地に、500キロワットの太陽光発電設備を持つサビデンキ(鯖江市)には、4月7、8、29日、5月1、2日にメールが届き、それぞれ翌日の午前8時から午後4時まで発電停止を求められた。太陽光発電事業部長の山下光一さん(40)は「北陸でも(出力制御が)行われることになり驚いた。電気代が高騰しているのに再エネの電気を捨てるなんて、という憤りもあった」と話す。現場へ行き、苦渋の思いで運転スイッチを停止に切り替えたという。

 同社によると、夏はパネルが熱くなって発電効率が落ちるため、5月ごろが年間で最も発電量が多い。通常は1日約10万円の売電収入があるが、佐飛康央社長(54)は「出力制御の分の収入がなくなり、経営に直接影響する」と嘆く。山下さんは「出力制御の可能性がある場合、日中の電気の単価を下げたり、給湯器を昼に稼働させたりするなど、需要を集中させる対策が有効ではないか」と指摘する。

 県内で50キロワット未満の太陽光発電設備を運営する別の事業者は4月9日午前10時半から午後4時まで停止した。「北海道のブラックアウト(2018年)のようにならないためにも出力制御は仕方ない」と一定の理解を示す一方、「国として再エネを普及させていくのであれば、蓄電池など早急に需給調整対策を実現してほしい」と求めた。

 関西電力送配電管内ではまだ太陽光や風力で出力制御を実施していない。

出力制御のルール

 国は、出力制御を実施する条件や発電停止を求める順番を定めている。まず調整しやすい火力の出力を抑制し、余剰電気を使って水をくみ上げる揚水発電を稼働させる。さらに他地域への送電を実施する。それでも状況が変わらなければ、バイオマス、太陽光・風力の順に発電停止を求める。瞬時に調整が難しい原子力、水力、地熱は最後となっている。10キロワット未満の家庭用の太陽光は対象外。