No. 1807 ロシアに対する経済戦争はなぜ失敗したのか

Why the economic war against Russia has failed

The Spectator (May 13 2023)

今週、ウラジーミル・プーチンの戦勝記念日の赤の広場でのパレードではたった1台の戦車が含まれ、それは博物館からの遺物であったことで西側からは笑いが聞こえた。ロシアはウクライナで多くの軍用品を失い、かつてのソビエト連邦の軍事大国の面影はない、というのがその推測であった。

ロシアは確かに大きな損失を被った(ただし海外で戦争を行っている国なら、その軍備は儀礼的なパレードではなく実際の任務に投入しているだろう)。しかし私たちは傲慢になるべきではない。実は、西側諸国にとってもこの戦争はうまくいっていない、少なくとも一つの点において。

昨年2月24日、プーチンがウクライナに戦車を送り込んだとき、西側諸国は迅速に2つの戦略を採用した。一つは、直接の軍事衝突はしないが武器などの軍事装備でウクライナを支援するというものであった。国によって支援の速度は異なったがこの戦略は見事に成功した。ウクライナはロシア軍に抵抗し、その結果はまだ確実ではないにせよ多くの地域からロシア軍を押し戻すことに成功した。

欧米は自国の影響力を誇張して制裁戦争に踏み切った

しかしもう一つはモスクワに経済戦争を仕掛け、かつてない規模の金融「ショックと畏怖」を与えようとする計画であった。ロシアは医薬品などの人道的なものを除き、すべての輸出入を制裁・ボイコットされ、ほぼ完全に断絶されることになった。これで理論的にプーチンのロシアは降伏するほど貧しくなるはずだった。

西側では、この面での戦争がどれほどひどい状況になっているかを知っている人はほとんどいない。ヨーロッパはロシアの石油とガスの一部ボイコットを実現するために自ら高い代償を払った。英国のロシアからの化石燃料輸入は、2021年には合計45億ポンドだったが、2023年1月までの1年間では公式には13億ポンドに減少した。2020年、EUはガスの39%、石油の23%をロシアから調達していたが、昨年第3四半期にはそれぞれ15%、14%に減少している。

しかしこれらの数字は、ロシア経済にダメージを与えることができなかったという規模を説明するものではない。西側諸国は経済戦争に熱心であったが、世界の他の国々はそうではなかったことがすぐに明らかになった。ヨーロッパ向けの石油・ガス輸出が減少する中、ロシアは中国とインドへの輸出を急増させた。両国はウクライナ侵攻に反対する姿勢を見せるよりも、石油を安く買うことを好んだのだ。さらに悪いことに、インドに輸出されたロシアの石油の一部は、スエズ運河を通ってヨーロッパに戻されているようだ。インドから精製された石油を運ぶ船の数が増えている。

逆方向の吸い上げもあるようだ。ドイツの新聞「Bild」の調査によると、ロシアと国境を接する国々への輸出が不穏な勢いで増加していることが判明した。例えばカザフスタンへのドイツ製自動車の輸入は2021年から2022年にかけて507%、アルメニアへの輸入は761%増加した。化学製品の輸出は、アルメニア向けが110%、カザフスタン向けが129%増加した。アルメニア向けの電気・コンピューター機器の売上は343%増だ。これらの商品が旧ソビエト共和国に到着した後、どうなっているのかを確定するのは容易ではないが、考えられるのは貿易のフローを迂回してロシアに行き着くということである。また、このような商品が正式に再輸出されていないとしても、多くのロシア国民がこれらの国へのビザなしアクセスを保持しており、国境を越えて商品を持ち出すことが可能である。

欧米は、特にロシアの富裕層を経済制裁の対象にしようとする政策をとってきた。しかし皮肉なことに、彼らは迂回貿易によって最も簡単に西側諸国の商品を手に入れることができる人々なのである。二重パスポートを持ち、高級品を買うために海外に行く余裕があるのは彼らなのだ。ロシアに対する世界的なボイコットでもしない限り、欧米製の商品がロシアの富裕層の手に渡るのを防ぐのは非常に困難である。

私たちが発見したように、非西側諸国はロシアにもロシアのオリガルヒにも制裁を加える意志がないのだ。誤算の結果は誰の目にも明らかである。昨年4月、IMFはロシア経済が2022年に8.5%縮小し、今年はさらに2.3%縮小すると予測した。しかし実際には、昨年のGDPは2.1%しか減少せず、今年は0.7%の微増とIMFは予測している。ウクライナ戦争が昨年2月の時点で多くの人が想像していたよりもずっと悪い方向に進んでいるにもかかわらず、である。ロシア経済は破壊されたのではなく、西ではなく東や南を向くように再構成されたに過ぎない。

ロシアに経済戦争を仕掛けたことは、必ずしも間違ってはいなかった。私たちが想像していたような規模ではないにせよ、西側の制裁によってロシアは被害を受けた。しかし、西側諸国が将来、爆弾や弾丸を使わず、純粋に経済的な手段で戦争ができると考えているとすれば、それは大きな間違いである。

西側の軍事装備のおかげで、ウクライナはダビデ対ゴリアテの戦いを繰り広げることができ、まだ勝てるかもしれない。しかし経済制裁については、もう一度考えなければならないだろう。

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