半導体装置7社、23年4〜6月期減収へ メモリー低迷で
世界の半導体製造装置メーカーで業績の悪化傾向が鮮明になっている。主要9社のうち7社で2023年4〜6月期(一部5〜7月期)の売上高が前年同期と比べて減少する可能性がある。半導体市場の悪化で顧客が投資を抑えており、下振れリスクもある。一方で需要底入れと生成AI(人工知能)の注目から再成長への期待が先行し、株価は騰勢を強めている。
米アプライドマテリアルズ(AMAT)は18日、23年5〜7月期の売上高が57億5000万〜65億5000万ドル(約7900億〜9000億円)と、前年同期比12%減〜微増になる見通しだと発表した。中間値は6%減で、四半期ベースで減収となれば19年8〜10月期以来、15四半期ぶりだ。
国内外の大手9社の23年1〜3月期(AMATは2〜4月期)は6社が前年同期比で増収を確保しており、純利益では4社が増益だった。ただ4〜6月期(同5〜7月期)の会社やアナリストの予想をみると、AMATのほか米ラムリサーチや東京エレクトロンなど7社で減収の可能性があり、悪化傾向が強まる。
業績悪化の主因は、半導体市場の悪化を受けた半導体メーカーによる製造装置投資の抑制だ。
特にメモリー製造はスマートフォンやサーバー向けなどの需要減少と価格急落で低迷し、影響が大きい。ウエハーに回路を形成する「前工程」製造装置(WFE)市場に占めるメモリー向け投資の割合は「過去10年以上で最低の水準にある」(AMATのゲイリー・ディッカーソン最高経営責任者=CEO)。東京エレクトロンはメモリー投資の回復が「(今年後半としていた)想定より若干遅れている」とする。
演算用の最先端ロジック、ファウンドリー(製造受託)でも「顧客は今年の投資計画を縮小している」(AMATのディッカーソンCEO)。半導体市場の減速を受け、東京エレクトロンは23年のWFEの世界市場見通しを前年比20%減から25〜30%減に引き下げた。米国主導の対中輸出規制で各社の中国への先端品向け装置の販売も減る。
一方で自動車や産業向けなど非先端品用の需要は各社の想定より堅調に推移する。中国では米国の輸出規制の対象外である非先端品への投資が活発だ。東京エレクトロンは24年3月期の中国向け販売比率が3割強と前期の24%から拡大するとみる。中国以外でも伸びており、AMATは車載向けなどの事業が「米国・欧州・日本で最も成長している」(ディッカーソンCEO)という。
各社の見通しでおおむね共通しているのは、23年下半期に上半期比で若干の需要回復を見込んでいる点だ。ただ世界景気の減速懸念が強まる中で台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子など大手半導体メーカーの設備投資計画が下振れするリスクも残っており、業績反転のタイミングはなお見通しにくい。
事業環境の厳しさとは裏腹に、各社の株価は22年10月ごろから需要底入れを先取りする形で回復基調にある。直近1カ月では1〜3割の上昇だ。株式市場では「生成AIや米国の大型補助金などを背景に、底入れ後の再成長も織り込み始めている」(楽天証券経済研究所の今中能夫氏)との見方がある。
半導体関連株が大幅に調整する前の21年末との比較では、ディスコ(59%高)やアドバンテスト(28%高)など、日本の(検査や組み立てなど)後工程の装置メーカーで強さが目立つ。「ディスコは電気自動車(EV)などに使うパワー半導体向け、アドバンテストは生成AI用画像処理半導体(GPU)向けなどで出荷拡大の期待が高まっている」(岩井コスモ証券の斎藤和嘉氏)
一方、製品構成や生産規模の大きさなどから装置市場全体との連動性が高いAMATや東京エレクトロン、ラムリサーチの株価は21年末比でなお2割程度安く、回復度合いにはばらつきがみられる。世界景気の不透明感が高まる中、製造装置市場のV字回復について懐疑的な見方も根強いことを映している。