電力カルテル事件に関する記者会見の冒頭、頭を下げる関西電力の森望社長ら電力カルテル事件に関する記者会見の冒頭、頭を下げる関西電力の森望社長(右)ら Photo:JIJI

大手電力4社が絡んだカルテル事件や大手電力各社による不正閲覧問題など不祥事が相次ぐ電力業界。また、燃料価格高騰の直撃で、各社は極めて厳しい経営環境に置かれている。電力業界が抱えるさまざまな問題をどう解決すべきか。長期連載『エネルギー動乱』では、業界再編の必要性を訴える、“業界のご意見番”橘川武郎氏の寄稿をお届けする。論稿では関西電力と中国電力の統合といった合理的な三つの大胆な再編シナリオが提言されている。

「発送電の所有権分離」論には違和感
しかし「合理的な業界再編」は必要

 大手電力会社間の違法なカルテル、旧一般電気事業者すべてが行っていた情報の不正閲覧……(ダイヤモンド編集部注:大手電力会社間とは関西電力、中部電力、中国電力、九州電力。旧一般電気事業者とは前出4社と東京電力ホールディングス、東北電力、北海道電力、北陸電力、四国電力、沖縄電力の計10社)

 今、日本の電力業界は、相次ぐ不祥事に揺れている。

 いずれもとんでもない行為であることは火を見るより明らかであるが、やや違和感を覚えるのは、後者の不正閲覧を巡って、発送電分離を法的分離から所有権分離へ移行させる案が浮上している点である。

 率直に言って、非常時の系統運用能力の確保、財産権への抵触などから見て、所有権分離はあまりに短兵急な議論であるし、政治的思惑が見え隠れすることも否定できない。

 不正閲覧問題の解決のためには、当面、法的分離を維持したまま、罰則の抜本的強化と電力・ガス取引監視等委員会の機能拡充とで臨むべきであろう。

 しかし、このことは、日本の電力業界に再編が必要ないということを、けっして意味しない。より合理的な再編が求められているのである。