<記者だより>大海の一滴

2023年3月19日 07時29分
 地球温暖化を巡り、それは「大海の一滴」論と呼ばれてきた。
 神奈川県横須賀市にあるJERA(ジェラ)の石炭火力発電所の稼働が迫っている。「排出される二酸化炭素(CO2)が温暖化を進める」。こう主張して稼働中止を求めた住民たちの訴えを、東京地裁は一月、退けた。判決文にはこう記された。
 「発電所単体から排出される二酸化炭素により、地球規模で進行する温暖化に伴う災害などによる被害の規模や頻度が有意に増大するとは認めがたい」
 過去に取材した高校生を思い出した。県立高で使われる電力を全て再生可能エネルギーに替えてほしいと県に訴えていた。「少しでも貢献したい」と、親に頼んで自宅の契約も再エネに替えたという。
 エネルギー起源のCO2排出量で見ると、日本は世界五位だ。そんな中、手の届く範囲から動こうとする若者もいる。気候危機を食い止めるため、世界全体で排出できる余地は多くない。新設される発電所は、本当に一滴にすぎないのだろうか。(米田怜央)

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