発電・燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、脱炭素を実現した未来社会のあり方がテーマの2025年大阪・関西万博の目玉の一つ。この日本のパイオニア企業が、プロパンガスやカセットコンロの普及で知られる岩谷産業だ。万博では水素燃料電池船の運航を計画するが、すべては80年以上前から水素販売を手掛け「21世紀には水素が世の中を変える」と唱えた創業者、岩谷直治氏の先見性から始まる。「世の中に必要なものこそ栄える」とする企業理念は未来の水素社会に向けた準備にも脈々と受け継がれる。
冷熱利用で電気代節約
「需要の先行きが見えない段階で布石を打った究極の先行投資です」
大阪湾に面する堺市西区の築港新町で稼働する液化水素製造会社「ハイドロエッジ」の美澤秀敏社長は、こう説明する。
水素社会の到来の鍵を握るのが液化水素だ。常温では気体の水素はマイナス253度以下になると液体になり、液化すると体積が800分の1に。大量輸送・大量貯蔵にはコストを大幅に軽減できる液化が欠かせない。