ベスト👍 フィクション
『図書館がくれた宝物』
ケイト・アルバス 作
櫛田理絵 訳
徳間書店 刊
2023年7月 発行
定価2090円(税込)
384ページ
対象:小学校高学年から

ロンドンから疎開した本の好きな3人きょうだいの、心あたたまる物語

第二次世界大戦下のイギリス。ロンドンから戦火を避けて学童疎開をすることになったウィリアム(12歳)、エドマンド(11歳)、アンナ(9歳)のきょうだいには秘密の計画がありました。実は3人は唯一の肉親である祖母を失くしたばかりーー「後見人」が必要な子どもたちは弁護士の勧めで、家族となってくれる家庭を疎開先で探すことにしたのです。ところが、3人を引き取ってくれたフォレスター家の双子の男の子は「きたない疎開野郎」などと言い、大人に隠れて意地悪をします。3人が唯一くつろげる場所は村の図書館で、司書のミュラーさんとはたちまち友だちになりますが、何故かミュラーさんは村の人たちから嫌われているようです。そんなある日、日ごろの意地悪を腹に据えかねたエドマンドが双子にしかけたいたずらが思わぬ事件に発展し、濡れ衣を着せられたエドマンドときょうだいたちは、フォレスター家を追い出されてしまいます。次に連れていかれたのは、小さな子どもが4人もいる貧乏な家で、3人の暮らしはますます厳しく辛いものになっていくのです……。

本好きなきょうだいが疎開に行く前、荷物の制限された中でも選びに選んだ自分の1冊を鞄に入れる気持ちは、切ないほどよくわかります。本は3人の苦しい状況を物理的に救ってくれたわけではありませんが、その存在がなければ見知らぬ土地での不安な生活は、より一層苦しく孤独なものになったことでしょう。そして、本が結んでくれた縁が、最後に彼らが求め続けた「ほんとうの家族」に導いてくれる結末には胸が熱くなります。

物語の中に登場する数々の本を、まだ読んだことのない方はぜひこの機会に手に取っていただきたいです。日本語で読める本もたくさんあります!(か)

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