AIの脅威「気候変動より大きい」、研究第一人者ヒントン氏が警告

AIの脅威「気候変動より大きい」、研究第一人者ヒントン氏が警告
人工知能(AI)研究の第一人者として知られるジェフリー・ヒントン氏は5日、ロイターのインタビューに応じ、AIが人類にもたらす喫緊の脅威は気候変動よりも大きいとの考えを示した。写真は2017年12月、カナダのトロントで開かれたトムソン・トイター・ファイナンシャル・アンド・リスク・サミットに参加するジェフリー・ヒントン氏(2023年 ロイター/Mark Blinch)
[ロンドン 5日 ロイター] - 人工知能(AI)研究の第一人者として知られるジェフリー・ヒントン氏は5日、ロイターのインタビューに応じ、AIが人類にもたらす喫緊の脅威は気候変動よりも大きいとの考えを示した。
ヒントン氏はこのほど、AIの危険性について自由に話すために約10年間務めた米アルファベット傘下のグーグルを退社した。
ヒントン氏はインタビューで「気候変動を軽んじることはしたくない。気候変動を心配する必要はないと言いたくない。気候変動は大きなリスクだ」としながらも、「最終的にはAI(の脅威)の方が緊急性が高いと考えている」とし、「気候変動の場合は何をすべきかを勧めるのは極めて簡単だ。炭素の燃焼を止めれば、やがてうまくいく。AIについては、何をすべきかはまったく明確でない」と語った。
米マイクロソフトがバックアップする米新興企業オープンAIが昨年11月にリリースした対話型生成AI「チャットGPT」が起爆剤となり、AIを巡る競争が加速。チャットGPTの月間ユーザー数がリリースから2カ月で1億人を超えるなど利用が急拡大する中、米実業家イーロン・マスク氏やAI専門家、業界幹部らは4月、公開書簡でAIシステムの開発を6カ月間停止するよう提唱。社会にリスクをもたらす可能性があるとして、まずは安全性に関する共通規範を確立する必要があると訴えた。
ヒントン氏は、AIが人類にとって存亡の危機となる可能性があるという公開書簡で示された懸念は共有するとしながらも、研究の一時停止には賛成できないと表明。研究の一時停止は「全く非現実的」とし、「存亡の危機に近いからこそ、今すぐにでも懸命に取り組み、これに対して何ができるかを考えるために多くのリソースを投入すべきとの考えに賛同している」と述べた。
バイデン米大統領は4日、ホワイトハウスで開かれたAI関連企業の首脳らとの会合に参加し、AIに絡むリスクや安全対策を巡り議論。会合にはアルファベットのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)のほか、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、オープンAIのサム・アルトマンCEO、アンスロピックのダリオ・アモデイCEOが出席した。
ヒントン氏は「テック企業のトップはAIについて最も良く理解しており、政治家も巻き込んでいかなければならない」とし、「誰もが影響を受けるため、誰もが考えていかなければならない問題だ」と語った。

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