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地球の温暖化をこのまま放置すれば、大雨や干ばつなどの自然災害が頻発し、生態系にも大きな影響が及ぶ。各国の真剣な取り組みが急務だ。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、地球温暖化の最新の知見をまとめた第6次統合報告書を発表した。
IPCCはこれまで、三つの作業部会で、温暖化の現状や自然環境への影響を分析してきた。統合報告書はこれらをまとめた内容で、今後の議論の土台となる。
温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇幅を1・5度に抑えるのが事実上の目標となっている。しかし、世界の気温はすでに1・1度上昇し、目標達成に向けた道筋はますます険しくなっている。
報告書の予測では、温暖化に歯止めがかからないと、2030年代前半にも上昇幅が1・5度を超える。今世紀末には3・2度に達するという。現状について強い危機感を示したと言えよう。
各国はすでに、30年までの温室効果ガス削減について高い目標を打ち出している。報告書は、これが達成されたとしても、上昇を2度に抑えられないと指摘した。
1・5度と2度では、異常気象の発生頻度や生態系への打撃で大きな差が出る。1・5度目標の達成がいかに難しい挑戦か、改めて認識しなければならない。
IPCCは今回、1・5度の目標を達成するには、温室効果ガスの排出量を30年までに19年比で43%、35年までに60%、それぞれ削減する必要があるとした。
これから具体的な対応策を検討する各国に、より厳しい目標の設定を促す狙いがあるのだろう。年末にアラブ首長国連邦で開かれる気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)などの場を通じ議論を深めてほしい。
今後、化石燃料を使った火力発電をできるだけ減らし、脱炭素を進めることが重要だ。日本は、そのための技術開発や普及に力を注ぎ、世界に貢献したい。
太陽光や風力による再生可能エネルギーの導入を促進するとともに、二酸化炭素を排出しない原子力発電を活用していくことも、重要な方策の一つになるだろう。
ロシアのウクライナ侵略以降、天然資源の調達が困難になるなど世界のエネルギー情勢は一変し、脱炭素の流れも後退している。
国際社会は、ロシアの撤退によって戦争を早期に終結させ、協調して温暖化対策に取り組める環境を取り戻さねばならない。