東京ガスは7月、千葉県袖ケ浦市に2029年度の稼働を目指し、液化天然ガス(LNG)火力発電所を建設することを決めた。同プロジェクトは15年、出光興産と九州電力との協業により検討開始。だが、脱炭素化の世界の潮流の変化やウクライナ危機などを受け、協業企業は撤退した。残された東ガスは同社史上最大級の巨額投資をどのように決めたのか。決断の裏側に迫る。

2029年の稼働を目指し、出力195万キロワットのLNG火力発電所を建設すると決めた東京ガス(写真:北山宏一)
2029年の稼働を目指し、出力195万キロワットのLNG火力発電所を建設すると決めた東京ガス(写真:北山宏一)

 「電力は、我々にとってガスとともに双璧をなす事業だ。市場に依存せず、自ら発電所を持つことで顧客に安定的に電気を供給していく使命がある」

 東ガスは7月、経営会議を経て大規模なLNG火力発電所を新設すると決めた。投資額は3000億円程度とみられ、1社での投資規模は「東ガス史上最大級」(同社幹部)となる。発電、燃料事業を担当する棚澤聡専務執行役員は「落ち度はないか自問自答を繰り返しながら最終決断に至った」と話す。

 出力規模は3基で計195万キロワットと大きい。国内でこの規模の火力発電が29年以降に新設される計画は東ガスのプロジェクト以外にない。50年までのカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)実現のリミットを考えると、化石燃料のLNGを使う火力への投資は容易な判断ではない。

 15年から検討を始めた東ガスの火力建設プロジェクト。最大の山は、昨年6月の九州電力の離脱だった。

協業先を失った東ガスが迫られた選択

火力発電所建設のプロジェクトを率いた東京ガスの棚澤聡専務執行役員(写真・北山宏一)
火力発電所建設のプロジェクトを率いた東京ガスの棚澤聡専務執行役員(写真・北山宏一)
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