中国外相、台湾問題で米牽制 「地が動き山が揺れる」

【北京=三塚聖平】中国の秦剛(しん・ごう)外相は7日、北京で開会中の全国人民代表大会(全人代)に合わせて記者会見し、台湾問題について「どのように解決するかは中国人自身のことであり、いかなる外国も干渉する権利はない」と主張した。台湾の蔡英文政権への支援を進める米国に対し「台湾問題は中国の核心的利益の核心で、中国と米国の関係の核心だ」と強調し、「台湾問題の処理をうまくできなければ、中米関係は地が動き山が揺れるようになる」と牽制(けんせい)した。

来年1月の台湾の総統選に向け、習近平政権は台湾問題に関して米国への反発を強めていくとみられる。秦氏は、米側に「なぜ米国はウクライナ問題では主権や領土保全の尊重を強調しているのに、台湾問題では中国の主権や領土保全を尊重しないのか」と非難した。

秦氏は、米本土上空に飛来した中国の気球を巡る問題について「米国が外交的な危機を作り出した」と米側に責任を押し付けた。

秦氏は、気球が米本土上空に飛来したことについて「不可抗力がもたらした偶発的な予測不能な出来事だ」と主張。米国が気球を打ち落としたことは「過度に反応し、武力を乱用した」と非難した。「米国の対中認識は著しく偏っている」と指弾した。

米欧が接近を警戒する中国とロシアとの関係については「ある国が冷戦期のフィルターで中露関係を見ている」と批判。中露関係について「世界のいかなる国の脅威にもならないが、いかなる第三国の干渉や挑発も受けない」と強調した。

ロシアによる侵略が続くウクライナ問題については「制裁や圧力では問題を解決できない」と指摘し、対露制裁を行う米欧、日本を牽制。米欧が懸念する中国からロシアへの武器支援については「いかなる側にも武器を提供していない」と述べ、ロシア、そしてウクライナにも武器を提供していないと主張した。

中国やロシアへの圧力を強める米国を念頭に、「冷戦思考や陣営同士の対抗、抑圧に断固として反対する」と表明した。

日中関係を巡り、秦氏は「日本の軍国主義は、かつて中華民族を深く傷つけた」と述べ、歴史問題を持ち出して批判した。秦氏は、日本に対し「中国を抑圧する新冷戦に参加すれば、中日両国の間で古傷が癒えないうちに新たな痛みが増えることになる」と強調。米国が呼び掛ける対中包囲網に日本が関与を深めることを食い止めたい考えとみられる。

また、日本側に「円滑な産業チェーン、サプライチェーンをともに守るべきだ」と呼び掛けた。バイデン米政権が半導体の対中輸出規制を進め、中国経済のデカップリングを同盟国などに呼び掛ける中、産業面で日本と接近したい思惑がうかがわれる。

日本政府と東京電力が春以降に始める福島第1原発の処理水の海洋放出についても触れ、「海洋環境と人類の健康に関わる重大なことだ」と発言。「責任ある態度でこれらの問題を処理するよう促す」と日本側にクギを刺した。

秦氏は、中国外務省報道官や外務次官、駐米大使などを歴任し、昨年末に外相に就任した。内外メディアを前に会見し、外交方針について説明するのは初めて。

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