コンゴ共和国のオザラ・コクア国立公園に生息する絶滅危惧種、マルミミゾウ。
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- プラスチック汚染や生物多様性の保全に向けた取り組み、途上国への「損失と被害」支援基金の設立などに関し、各国で合意が形成された。
- アメリカ、欧州連合、オーストラリアは、それぞれがより強力な気候変動対策に関する法律を制定した。
- 世界では今後5年間で、過去20年間と同量の再生可能エネルギーを利用すると予測されている。
2022年は、気候危機との戦いにおいてさまざまなことがあった。
異常な熱波、ハリケーン、洪水により、世界各地で数千人の命が奪われ、数十億ドルの損害が発生した。これらの災害は、石炭、石油、ガスの燃焼によって増え続ける温室効果ガスの排出削減対策を早急に講じなかった場合に起こる未来の姿を示している。
しかし、地球にとって転換点となるような出来事も少なからずあった。アメリカとオーストラリアにおける気候変動に関する法律の制定、電気自動車や再生可能エネルギー市場の急速な拡大、プラスチック汚染や生物多様性の損失と闘うための国際的な合意などだ。
これらは、2023年以降も地球の生命にとっての希望となるだろう。
プラスチック汚染と生物多様性の保全に向けた取り組みの進展や「損失と被害」支援基金の設立
ケニアのナイロビにあるごみ捨て場を埋め尽くすプラスチックごみ。
James Wakibia/SOPA Images
世界の指導者たちの2022年は、増え続けるプラスチックごみの問題解決に取り組むと合意したことに始まった。そして動植物の大量絶滅を防ぐために陸地と海の少なくとも30%を保護するという合意をして、その年を締めくくった。
この2つの問題は、いずれも気候変動に関連している。プラスチックは天然ガスと原油から作られるもので生産量は1950年代から急増しており、その大半はごみとなって埋立地に捨てられる。森林伐採や河川の汚染は、野生動物の生息地に害を与えるだけでなく、大気中に汚染物質を放出し、陸地や海が炭素を蓄えて温暖化を遅らせる効果を損なっている。
2022年11月に開催された第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)では、途上国が直面している気候災害を補償するための「損失と被害」支援基金の設立に対して約200カ国が合意するという大きな成果があった。
これらの国際的な合意が成果につながるとは限らないが、少なくとも目標にはなる。
アメリカ、オーストラリアが気候変動に関する法律を制定
2022年8月16日、ホワイトハウスで「インフレ削減法」に署名するジョー・バイデン大統領。
Demetrius Freeman/The Washington Post
アメリカのジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は2022年8月16日、「インフレ削減法」に署名した。これは気候変動対策に関してアメリカ史上最も重要な法律とされる。アメリカは中国に次ぐ世界第2位の汚染排出国だが、この法律によって、太陽光発電や風力発電、クリーンな燃料・電気自動車・電気製品の普及が促進され、アメリカからの二酸化炭素排出量は今後10年で40%削減(2005年比)されるとアナリストは推計している。また今後10年にわたって約3700億ドル(約48兆円)に相当する税額控除、払戻し、融資・助成金制度が実施される。
9月には化石燃料の輸出量が世界第3位のオーストラリアも、この10年間で二酸化炭素排出量を43%削減し、2050年までに二酸化炭素排出量をネットゼロにすることを法律に明記した。オーストラリアでは長年、保守政党が気候変動対策の強化を図る法律の制定を妨げてきたが、労働党が政権をとったことで、この法律制定への動きが急速に進展した。
また、欧州連合(EU)は12月、気候変動の主要因である森林破壊に関連したパーム油、大豆、牛肉、コーヒーなどの輸入を禁止する法案に合意した。
再生可能エネルギー、電気自動車をめぐる競争
GMCの電気自動車「ハマー」。
Zhe Ji/Getty Images
国際エネルギー機関(IEA)は2022年から2027年の5年間で、2001年から2021年までの20年間に使われたのと同量の再生可能エネルギーが使われると予測している。それだけ使用が拡大すると、2025年初頭までに再生可能エネルギーが石炭を抜いて世界最大の電力供給源になる。中国、EU、アメリカ、インドでの使用拡大がそれを後押ししている。太陽光発電は現在、ほとんどの国で新たな電力として最も安価な選択肢となっている。ロシアのウクライナ侵攻によって、世界的なエネルギー危機が引き起されたが、むしろそれによって「ヨーロッパにおけるクリーンエネルギーへの移行が加速されている」とIEAは述べた。
2022年は、少なくともアメリカなどの豊かな国々において、電気自動車(EV)が大衆にアピールし始めた年でもあった。今ではほぼすべての自動車メーカーが独自のEVを展開している。GMでは10年以上前にガスを大量に消費するハマーの製造を中止したが、EVバージョンのハマーを復活させた。
2022年に世界の新車販売台数のうちEVが占めるのは史上最高の13%になるとIEAは推計している。このペースでいけば、2050年までに車から排出される二酸化炭素をネットゼロにするという目標が達成されるだろう。