進む原子力産業の空洞化 原発の稼働縮小や輸出頓挫が響く

日立製作所本社の入るビル
日立製作所本社の入るビル

平成23年の東京電力福島第1原発事故後、原発の稼働を経験していない電力会社の運転員が増える中、原子力産業の空洞化も進んでいる。原発の海外輸出が頓挫した上、国内の原発は再稼働が進まず、新設も見通せない状況が続く。国内メーカーは原子力部門の縮小を余儀なくされ、関連技術の継承が課題の一つになっている。

日本電機工業会(JEMA)によると、22年度に約1万4千人だった技術者や研究者など原子力関連の人材は、令和3年度には約1万人に減少。三菱重工業は震災前にグループ全体で約5千人いた原発関連の人材を震災後は約4千人に縮小した。

原発新設は、受注額が数千億円規模となる一大プロジェクトだ。政府は成長戦略の柱として原発輸出を推進したが、福島原発事故以降は世界的に原発の安全基準が強化され、工期延長などで多額の費用が発生。採算が合わず、国内メーカーの原発輸出は頓挫した。2年半前に英国での原発建設から撤退した日立製作所は「リスクが伴う海外プロジェクトに今後参画する考えはない」と強調する。

技術継承の難しさにも直面している。メーカーの原発事業は廃炉作業や保守が中心となり、日立ではグループ全体のうち新設に関わった技術者が3年3月末時点で約25%にとどまった。メーカーは次世代型原発への建て替えなど政府のエネルギー政策の転換に期待を寄せる。三菱重工は5、6年度の原発関連人材の新規採用を増やす。

政府も支援に乗り出す。経済産業省は産学官連携の枠組みとして「原子力サプライチェーンプラットフォーム(NSCP)」を設立。学生向けの原子力関連企業の講座を支援するなど体制整備を進める方針だ。

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