LNGの戦略的確保で新基金 企業、余剰在庫で逼迫時に国内供給 政府12月から

サハリン2で液化天然ガスを積み込むLNGタンカー=2021年10月、ロシア・サハリン州(AP)
サハリン2で液化天然ガスを積み込むLNGタンカー=2021年10月、ロシア・サハリン州(AP)

経済産業省は、火力発電用の燃料や都市ガスなどに使われる液化天然ガス(LNG)の安定供給に向け、企業が余剰在庫を確保できるよう新たな仕組みを導入する。新たに設置する基金を通じて、企業が戦略的に平時の需要より多くLNGを調達できるようにする。平時は余剰分を主にアジアなど海外市場で売却し、非常時は日本向けに販売する。ウクライナ危機で浮き彫りになった需給逼迫(ひっぱく)や供給途絶リスクの回避につなげる。

まず経産省が独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に基金を設置する。その上で、同省が定める要件を満たす電力会社やガス会社、商社などの認定企業が、暖房用などの需要が高まる令和5年12月から6年2月まで毎月、LNGタンカー1隻分以上の量(7万トン程度)を多めに調達する。

平時は自由に販売できるが、国際情勢の急激な変化などで需給が逼迫した際には、同省が指定する国内企業へ販売する。この時の取引で生じる損失は基金から助成金を交付して補(ほ)塡(てん)し、利益が出たときには基金へ還元する仕組み。

欧州各国がウクライナ危機をきっかけに、ロシアからのパイプラインでの天然ガス輸入から、別の地域からのLNG輸入への置き換えを急いでおり、LNG争奪戦が激化している。

日本のLNG輸入の約9%を占めるロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」では、運営会社の変更後も日本企業の権益が維持されることになったが、ロシア側の突然の政策変更による供給途絶の懸念がくすぶる。

新たな仕組みについて、経産省は余剰分によって取扱量が増える日本企業には調達時の交渉力が高まるメリットがあるとしている。ただ、協力してもらう認定企業に株主への説明責任が生じるため、さらなるインセンティブ(動機づけ)が必要との見方もある。

LNGは気化しやすく原油のように長期間タンクに置いた備蓄が難しい。経産省は普段から企業の調達体制を生かしてLNGを確保し有事に備える。

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