豊田通商子会社で風力発電国内最大手ユーラスエナジーホールディングス(HD、東京・港)などが北海道北部で国内最大級の陸上風力発電所を稼働させた。地元企業とともに送電網も一体整備。初めて大手電力以外が需要地に再生可能エネルギーを送る架け橋を担った。地方の送電線の空き容量は乏しく、大手電力の資金不足もあって新設が遅れ気味。ユーラスエナジーHDなどはそこに風穴を開けた。

ユーラスエナジーHDなどの風車建設で北海道の風力導入量は2倍に
ユーラスエナジーHDなどの風車建設で北海道の風力導入量は2倍に

 北海道最北端の稚内市。周辺の幌延町を含む1市2町にまたがるエリアを車で走ると風車が林立している様子が次々と目に飛び込んでくる。中には建設中の風車もある。

 ユーラスエナジーHDなどは5月、1つのプロジェクトとしては国内最大級となる風力発電所を稼働させた。まず33基からだが、ユーラスエナジーHDだけで2025年までに建設するのは計107基の設備で総出力は計45万7000キロワット。同社以外にコスモエネルギーホールディングス子会社のコスモエコパワー(東京・品川)を合わせると計127基、計54万キロワットと原子力発電所1基の半分程度に相当する規模になる。

 北海道が導入する風力発電の発電能力は一気に2倍近くになり、現時点でトップの青森県を抜き去ることになる。

 ここで疑問が湧く。「大量に発電して北海道内で消費しきれるのか」。実はこれへの答えが、今回のプロジェクトの肝になっている。

 稚内市周辺のエリアを上空から見ると、「風車銀座」の合間を縫うように南北に鉄塔が並んでいる。鉄塔の間は送電線が引かれている。鉄塔は数にして計269基、送電線は計78kmにも及ぶ。変電所や開閉所も計3カ所ある。

北海道北部風力送電は78kmにわたって送電線を整備した
北海道北部風力送電は78kmにわたって送電線を整備した

 この鉄塔と送電線は北海道北部風力送電(稚内市)が建設した。ユーラスエナジーHDやコスモエコパワー、地元の金融機関が共同出資した会社だ。総事業費は約1000億円になり、このうち4割を経済産業省が補助した。

 「この地域は風力資源に恵まれているのに送電網が脆弱だった。それなら自分たちで整備しようとなった」。北海道北部風力送電の吉村知己社長はこう説明する。

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