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 日本発の発電形態とも言われる営農型太陽光発電所(ソーラーシェアリング)。ここにきて国内で新規の許可件数が増加し、異業種からの新規参入も活発化している。一方、国外にも目を向けてみると、欧州を中心に営農型太陽光のプロジェクト開発が増加しつつある。(図1)。

図1●海外の主要な営農型太陽光発電プロジェクトの例
図1●海外の主要な営農型太陽光発電プロジェクトの例
(出所:公開情報より筆者作成)
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世界最大1GWの営農型でゴジベリーを生産

 これらプロジェクトから、営農型太陽光を巡るトレンドが見えてくる。大手企業による参入、大規模化のほか、追尾式架台や両面発電パネルなど次世代型ともいえる新しい手法の採用、地域との共存共栄や持続可能性の重視といった傾向が見て取れる。

 大規模化と言う点では、中国・寧夏回族自治区の黄河東岸にある浜河(Binhe)新区でITサービス大手のバオフェン・グループ(Banfeng Group)と電機大手のファーウェイ(Huawei、華為技術) が開発した営農型太陽光発電所「バオフェンPVパーク」は連系出力1000MW(1GW)に達し、現時点では世界最大と見られる。

 プロジェクトの当初、2020年9月の時点では640MWで電力系統に連系し、稼働を開始した。その後、1GWまで増設する計画が発表されている。総面積は20km2(2000ha)もの広さになる。

 バオフェン・グループは砂漠化が進行していたこの土地の土壌改良を2014年に開始した。当初植えた作物は、マメ科の多年草で主に飼料に使われるアルファルファである。アルファルファによる土壌改良のあと、同自治区で1000年の歴史を誇る伝統的な作物であるゴジベリー(クコの実)の植え付けを開始し現在に至る(図2)。

図2● バオフェン・グループとファーウェイが開発した営農型太陽光発電所。従業員が運搬しているのは、収穫したクコの実
図2● バオフェン・グループとファーウェイが開発した営農型太陽光発電所。従業員が運搬しているのは、収穫したクコの実
(出所:Huawei)
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 プロジェクトの完成後、CO2排出量は1年当たり169万5000t、二酸化硫黄(SO2)は同5万1000t、窒素酸化物(NOX)は同2万6000t、粉塵は同46万2000tがそれぞれ削減されるとする。

 「バオフェンPVパーク」は太陽光によるクリーンな電力を供給すると同時に、地元のゴジベリー農家に収益や雇用をもたらし、同自治区の砂漠化を食い止めるという重要な役割を期待されている。