気候変動、日本以外と温度差 技術で脱炭素に貢献を G7

G7広島サミットのワーキングランチ冒頭であいさつする岸田文雄首相(左端)=19日午後1時47分、広島市南区のグランドプリンスホテル広島(鴨川一也撮影)
G7広島サミットのワーキングランチ冒頭であいさつする岸田文雄首相(左端)=19日午後1時47分、広島市南区のグランドプリンスホテル広島(鴨川一也撮影)

先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が20日に発表した首脳声明には化石燃料の段階的廃止の加速が初めて明記されたが、焦点となっていた石炭火力発電の廃止時期は盛り込まれなかった。脱炭素化の手法で他の6カ国と事情の異なる日本の主張が反映された。経済成長が続く新興国に一定の配慮をしつつ、排出量削減の強化に取り組むことも促した。

「各国・地域ごとに条件が一様でないと認識したうえで、実効的な対策をうつことが重要だ」。20日の気候変動問題などを議論する討議で、岸田文雄首相はこう強調した。

首脳声明では、これまで対象を石炭に限っていた段階的廃止を化石燃料全般に拡大。電力部門については「2035年までに完全または大部分を脱炭素化」にとどめた。新興国にも排出削減を促した。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書などを踏まえた取り組みが必要とも指摘した。

再生可能エネルギーの導入拡大に関しては30年までに、G7全体で太陽光発電は現状の3倍強の10億キロワット以上に、洋上風力発電も各国の目標に基づき1億5千万キロワット増やすとした。

ただ、近年、脱炭素化の手法をめぐり、日本と他の6カ国の対立が目立つ。

日本は太陽光発電などの適地が少なく再エネを増やしにくい。30年度段階でも一定程度の石炭火力の活用を念頭に置いており、石炭火力にアンモニアを混ぜて燃やし二酸化炭素(CO2)排出量削減を図るアンモニア混焼の導入などを訴える。英国やカナダなどはアンモニア混焼はCO2の削減効果が期待できないなどと批判している。

自動車分野でも、電気自動車(EV)など走行中にCO2を排出しないゼロエミッション車(ZEV)の数値目標導入などをめぐり、米国や英国と、日本の意見が対立した。

アンモニア混焼や低燃費車の技術はG7の中で日本が優れている。これらの技術を、アジアの新興国に導入してCO2排出量削減につなげるなど、具体的な成果を示してG7各国の理解を得られるかが、今後の議論のカギを握る。(永田岳彦)

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