「クリーンエネルギー」に途上国が違和感覚える訳 先進国と大きく異なる「エネルギー転換」の意味

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先進国が推奨する「クリーンエネルギー」は、途上国の人から見ると違和感があるといいます(写真:清十郎/PIXTA)
温室効果ガスを排出しない、あるいは排出量の少ない「クリーンなエネルギー」にすべきと先進国では言われているが、途上国の人からしてみれば、違和感を覚えるという。それはなぜなのか? エネルギー問題の世界的権威であるピューリッツァー賞受賞者のダニエル・ヤーギン氏の新刊『新しい世界の資源地図』から一部抜粋し、先進国と途上国での「エネルギー転換」の意味の違いを明らかにする。

薪や木炭などで調理することが原因で死ぬ人たち

「エネルギー転換」が何を意味するかは、国によって違う。とりわけ先進国と途上国とでは大きく異なる。いまだに電気のない暮らしを送る人が10億人、近代的な調理用燃料の使えない家に住む人が30億人いる。それらの人々は調理のため、薪や、木炭や、農作物の廃棄物や、牛糞を屋内で燃やし、健康を害している。

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ここからは別の視点が導き出される。「天然ガスに頼ってはいけない、もう次に行かなくてはいけないと言われます」と、ナイジェリアのティミプレ・シルヴァ石油相は言う。

「アフリカはそこまでたどり着いていないというのが現実です。わたしたちはアフリカのエネルギー貧困という問題を解決しなくてはなりません。再生可能エネルギーや電気自動車の議論では、考えに入れなくてはならないことがまだまだたくさんあります」

シルヴァたちが考えに入れなくてはならないと訴えているのは、前述の30億人──世界人口の40%を占め、世界保健機関(WHO)から「忘れられた30億人」と呼ばれる人々──が、前近代的な燃料のせいで室内空気汚染にさらされていることだ。

WHOはこれを「現在の世界で最も深刻な環境保健のリスク」と呼ぶ。この室内汚染が原因で死ぬ人の数は、年400万人近くに達する。さらにそれよりはるかに多くの人が、そのせいでさまざまな病気を患っている。子どもの場合には、発育障害を招くこともある。

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