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農家が効率的に草刈りをするには? プロ必見、刈払機・草刈機の正しい選び方

農家が効率的に草刈りをするには? プロ必見、刈払機・草刈機の正しい選び方

あぜの間、のり面、ハウスの脇といたるところに出現し、ただでさえ忙しい農家の時間を奪う雑草。特に成長の早い夏は草刈りに取られる時間が長くなり、その対応に困り果てている人も多いのでは。今回はプロ向けに草刈機の種類や選び方を徹底解説します!

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刈払機

草を刈ろうと思ったらまず手に取るのが刈払機ではないでしょうか。いろいろと種類があって、使い慣れたものをずっと使い続けている人も多いでしょう。しかしそれは本当にあなたの畑に最適でしょうか? 夏にかけて使用頻度も上がりますので、改めて圃場(ほじょう)の状態に合った刈払機を検討してみてもよいかもしれません。

刈払機で芝を刈る様子

刈払機で芝を刈る様子

動力の種類

使う場面によっては、動力も見直してみては。代表的なのは次の3つのエンジンです。

・2サイクルエンジン
3つのエンジンの中で最も広く使われているのが2サイクルエンジン。2サイクルエンジンとは、オイルとガソリンを混ぜた専用の燃料を動力にしたもののことを指します。構造がシンプルなため、価格帯は下記の2タイプに比べて安く、経済的。重量も他に比べて軽く使いやすいタイプです。2サイクル用の混合燃料も販売されていますが、自分で混ぜて使うこともできます。畑や田んぼなどの平らな場所に適しています。
燃料を機械に残したまま放置すると故障につながるので、アフターケアは念入りに。

・4サイクルエンジン
レギュラーガソリンのみを動力にする4サイクルエンジンは、2サイクルエンジンのように専用の混合燃料を用意する手間は省けます。レギュラーガソリンの方が混合燃料より安い上に、どこでも手に入る手軽さもあります。また2サイクルエンジンに比べて排気が少なく、燃費がいいと言われています。その分価格は2サイクルよりも高くなります。
パワーがあるので、背の高い草はもちろん、開墾する際や雑木林、足場の悪い場所や、角度のついた土手にも使用可能です。

・電気式エンジン
これまでは、2サイクル、4サイクルのようなエンジン式が主流でしたが、電気式エンジンのものも多く販売されるようになってきました。近年では、充電バッテリーの性能が向上してきたことにより、コードレスの充電式刈払機が増え、導入するプロ農家も増えてきました。電気式のいいところは、混合燃料やガソリンなどを用意しなくていいこと。そのためメンテナンスもより簡単になり、より手軽に使うことができます。
エンジン式に比べてパワーが劣るのでは?と懸念する人もいるかもしれませんが、最近の充電式は改良を重ね、エンジン式と何ら変わらないパワーを持っています。
予備のバッテリーを持っていれば、長時間の作業も安心です。

刃の種類

刈払機には2つの刃があります。刈る草に合うものをチョイスしましょう。

・チップソー
一般的によく使われているのがこのタイプです。切れ味が良く、柔らかい草はもちろん、背の高い草、小枝のような太くしっかりしたものも楽に刈ることができます。
チップとはノコギリの刃の先端に取り付けられる部品のことで、先端にチップを取り付けたノコギリ(英語でソー)をチップソーと言います。
このチップソーが高速で回転することにより、対象物を切断していきます。

チップソー

チップソー

難点は、多数あるチップのうち、2つ程度欠けてしまっただけでもバランスが崩れ、切断に影響が出てしまうこと。草刈り中に石やコンクリートに当たりチップが欠けてしまった場合は速やかに新しいチップソーに変えるようにしましょう。使用前後には刃の状態を念入りにチェックすることをおすすめします。

チップソーの価格帯は幅広く、高いものは比較的持ちが良く切れ味もいいとされています。しかし障害物が多い農地で使う場合は、チップが欠けることも想定し、安価なものをたくさん用意して使い捨てるのもいいでしょう。

またチップソーは直径が230ミリと255ミリの2種類あり、それぞれ刃数が異なります。ただし排気量が小さい刈払機には大きいサイズのチップソーはつけられないので注意しましょう。逆に排気量が大きいものにはどちらのサイズでもつけられることが多いです。

・ナイロンコード
ナイロンコードは、ナイロン製のカッターのこと。カッターと言っても刃物のような形状ではなくひも状になっており、それが高速で回転することで草を刈っていく仕組みです。ナイロンコードはチップソーのように金属ではないためケガにつながりにくく、安全に使用できます。

ナイロンコード

ナイロンコード

また、コンクリートの壁や石、フェンスなどの障害物が多い場面では、チップが欠ける心配のないナイロンコードの方が向いています。障害物を傷つけずに草刈りを行いたいときは特にこちらがおすすめです。

柔らかい草や芝生、背丈の低い草であればナイロンコードで十分に刈ることができますが、小径木やしっかりした背丈の高い草、幹の太い草はナイロンコードより切れ味の良いチップソーを選びましょう。場所によって使い分けてもいいですね。

ハンドルの種類

刈払機には大きく分けて3つの種類のハンドルがあります。それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

・Uハンドル(両手ハンドル)
ハンドルがU型になっており、一般的に広く使われているのがこのタイプです。付属のストラップを肩にかけ、本体を腰に下げる、または固定して使います。両手で持って作業できるので、大きく左右に振りながら草刈りができ、また両手で本体を支えるので位置が安定しやすく、使いやすいとされています。
ストラップを肩から下げて使用するため腕だけで本体を支える必要がなく、体にかかる負担が少ないのもメリットです。
構造的に刃先が作業者に近づきにくいので使用中の事故も起こりにくく、より安全性が高いと言えます。

おすすめは平地やなだらかな傾斜での使用。田んぼや平らで広い畑などでの作業に適しています。
逆に、傾斜がきつい場所や、障害物が多いところには向いていません。

Uハンドルの一例

Uハンドルの一例

・ループハンドル
さおにわっか状のハンドルがついており、ハンドルを一方の手で、もう片方の手でさおのグリップ部分を握って使用します。Uハンドルは大きく左右に振る動きができるタイプでしたが、ループハンドルは縦方向に動かしやすいのが特徴です。
そのため傾斜がある田んぼのあぜなどでも問題なく使用できます。
コントロールが利き、自由度が高い反面、刃先が作業者に近づきやすいデメリットも。十分に注意を払いながら使用しましょう。
元々の重量はUハンドルよりは軽量ですが、重量の大半を腕で支えるタイプなので、腕への負担は大きくなってしまいます。

ループハンドルの刈払機

ループハンドルの刈払機で草を刈る様子

・ツーグリップハンドル
さおにラバーグリップがついており、直接さおを握って作業するタイプがこちらです。両手でしっかり握って作業することができる上、手首を返して角度を変えられるため、細かな作業に適しています。十分なスペースが確保できず、さおを振りながら作業ができない時などは、こちらのタイプがおすすめです。
ループハンドル同様、自由度が高いタイプですが、やはり危険はつきもの。こちらも誤った使い方をしないよう、注意を払って使用しましょう。
直接さおを握って作業するため、他の2つのハンドルよりも振動が伝わりやすい一面も。しかし中空グリップといってグリップ部分が空洞になっているグリップを使うことで、ループハンドルよりも振動を抑えることが可能です。

草刈機(モア)

刈払機では対応しきれない広大な果樹園や牧草地のような場所では、草刈機(モア)と呼ばれる機械の出番です。草刈機の代表的なタイプも一つずつ見ていきましょう。

歩行型・オートモア

手で押しながら草を刈るタイプです。小回りが利き、木の根元まで刈ることができるので、ミカン、リンゴ、柿などの果樹農家では好んで使われています。モアの中でも安価なので、導入しやすく、草はみじん切りのように細かく砕かれるため、刈った草を片付けなくてもよいのがメリット。広い平地で、さらに背の低い柔らかい草に適しています。
搭載しているエンジンは最大で7馬力と大きくはありませんが、刃が横に回転するため、広い面積を一度に刈ることができ、その仕上がりはとてもきれいです。

オートモアの一例

オートモアの一例

下側のナイフが回転し、草を巻き込みながら刈っていく

下側のナイフが回転し、草を巻き込みながら刈っていく

歩行型・ハンマーナイフモア

ハンマーナイフモアは草だけでなく、小枝などの硬いものも粉砕することができます。砕いた枝や草はとても細かいので素早く土に還元できるのがいいところ。
この機能を用いて、果樹園などでは草刈りとしてはもちろん、剪定(せんてい)後の枝を砕く際にも使用されています。砕いた小枝や草はまとめて放置しておくだけで土壌改良材に。剪定木だけでもかなりのゴミになってしまうため、有機物を有機物として土に返すこのやり方はおすすめです。オートモアと同じ歩行型ですが、横に回転するオートモアの刃に対し、ハンマーナイフモアの刃は縦に回転し草や枝を粉々にしていきます。そのため刈り残しがあるのは否めませんが、馬力も高いため、背の高い草や枝も刈ることができ、また起伏があるところでも使えるというメリットがあります。刃が上からぶら下がっている構造なので、石などの障害物を避けることも可能。雑木林の整備や開墾の際に力を発揮します。

ハンマーナイフモアの一例

ハンマーナイフモアの一例

下側についた刃で草や枝を砕いていく

下側についた刃で草や枝を砕いていく

乗用型モア

乗用タイプの草刈機です。草刈機の中でも上位タイプで、価格は上記の2つよりも上がります。座席の下に刃がついていて、草を切り刻んでいきます。作業者はハンドル操作だけでよいので、体力は必要ありません。
トラクターのように馬力でクラス分けがされており、よりパワフルな草刈機が必要な場合は大きな馬力のものを選ぶとよいでしょう。
高馬力ではあるものの、その形状から広く、平らな場所が適しており、起伏のあるところ、雑木林などには不向きです。最近では太陽光パネル設置場所での草刈りに使われることも多いです。

乗用型モアの一例

乗用型モアの一例

自分でできるメンテナンス

一年のうちで草を刈る期間はとても長いため、刈払機や草刈機は出番が多い農機具の一つです。
頻繁に使用するとはいえ、使い終わったらきちんと手入れをしておくとより長く使えます。もちろん使用しない期間も適切な保管方法を心がけましょう。

ガソリンの使用上の注意

ガソリンは長持ちしないため、買い置きができません。使う分だけ買いましょう。また、使用後は機械にガソリンが残っていると、ガソリンが劣化して故障の原因につながります。

使用後には水洗い

使用後には必ず水洗いをしましょう。草が付着したまま放置しているとサビを招いてしまいます。
また草刈機にはエアクリーナーと呼ばれるスポンジがついていますが、そこに汚れが付着するとパワーが落ちてしまいます。忘れずにしっかり洗いましょう。

定期的な刃の交換

消耗品である刃は定期的に交換するようにしましょう。刈払機も刃は自分で取り換えられますが、草刈機も自分で付け換えることが可能。草刈機は刃を換えるための付属工具がついており、それを使って定期的に付け換えましょう。

草刈機は1年に1度はプロに見てもらう

草刈りの作業はかなり頻繁に行う必要があるため、機械の消耗も激しいとされています。特に草刈機に関しては、刃だけではなく、ベルトの交換や、障害物に当たってパンクしたタイヤ、ボディーに開いた穴やへこみは自分で直すことができません。使用頻度が高い分、見えないところに何か欠損があることが多いため、草刈りのシーズンが終わったら専門業者にメンテナンスに出すことをオススメします。

まとめ

刈払機・草刈機は、農機具の中でも使用期間が長く、しかも使う頻度も高いため、持っていない農家さんはいないというほど、普及率の高い農機具の一つです。特に刈払機は自宅の草刈りに使用するために購入する人も多く、一般にも広く浸透しています。
農業で使う際には、どんな農地で使いたいのか、どんな草を刈るのかを把握し、状況に応じた機具を導入しましょう。

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